子どものSNSトラブルを防ぐには?怖がる前に「知る」から始めたい、家庭でできるSNS・ネットリテラシー教育

監修者:株式会社EmpaC代表 松山 真衣
いまや子どもたちにとって、SNSやネットは生活に欠かせない道具になりました。友達とのやりとりも、趣味の発信も、好きな人の応援(推し活)も、スマホの中で行われることが珍しくありません。
それでも、多くの保護者にとって、特にSNSは未知の世界で「できる限り、子どもにはSNSは使わせたくない」「危ないことに巻き込まれないか心配」と不安が先に立つことも多いでしょう。
しかし、SNSを「危険だから禁止」としてしまうことは、必ずしも子どもを守る方法とは言えません。
子どもが見ているSNSの世界と、保護者や周りの大人の関わりについて、長年SNSに携わり、子どもたちへのSNSやネットリテラシー教育にも力を入れる、株式会社EmpaC(エンパシー)代表の松山さんにお話を伺いました。
SNSは子どもの世界を広げる、可能性のあるツール
松山さんは、「親が子どもが見ているSNSの世界を知り、一緒に安全な使い方を考えていくことこそ、本当の予防になる」と話します。
子どもにとってSNSとはどのような世界なのでしょうか?保護者が不安に感じるのは自然なことですが、SNSは危険なだけではありません。
SNSは、子どもたちに「新しい選択肢」を与える場にもなっています。
たとえば、SNSでたまたま見たダンス動画に刺激を受け、ダンスを習い始めた子どももいます。絵を描くのが好きな子が、イラストを投稿していたら、同年代のクリエイターとつながれたという話も珍しくありません。学校の中だけでは出会えない仲間や表現に触れ、「こんな世界もあるんだ」と視野を広げてくれるのがSNSの良さでもあります。
リアルではなかなか自信が持てない子も、オンラインのコミュニティで優しく迎えられ、自分の居場所を感じられる場合もあります。
「SNSは危険だから遠ざける」ではなく、「正しく使えば、子どもの未来の可能性を広げるもの」だと、ポジティブな面も知っておくことが大切です。
トラブルは、使うことが原因ではなく、「知らないまま使うこと」から起きる
もちろん、SNSには、注意すべき点があります。
制服姿の写真を投稿したことで学校が特定されてしまうこともあれば、写真に映り込んだ背景や位置情報から居場所がわかってしまうこともあります。
LINEのグループ内での仲間外れや、オープンチャットで見知らぬ大人とつながってしまうなど、さまざまなトラブルが起こり得ます。
松山さんは「危険があるから、禁止する」のではなく、「親の知らないところで子どもが1人で判断してしまう状態」こそが最もリスクが高いと言います。
禁止されると、子どもは親の目を盗んで隠れて使うようになります。万が一のときに相談できない状況をつくり、トラブルの芽が見えなくなってしまうのです。
大切なのは「ルール」より先に「理解すること」
子どもの世界を知ることが最大の予防になる
松山さんが保護者にまず勧めているのは、細かいルールを作る前に「子どもが実際に、SNSで何を見ているのかを知る」こと。これは、すぐにでも、そして誰でもできる予防策です。
例えば、このように子どもと会話をしてみることができます。
「最近、どん動画を見てるの?」
「好きなクリエイターいる?」
「この投稿、すごいね。一緒に見てもいい?」
そんなふうに、SNSの話題を気軽に共有できる関係性があるだけで、子どもは、「SNSやネットで何かあったとき、相談してもいいんだ」と、感じやすくなります。保護者や周りの大人がSNSにポジティブな興味を示してくれることで、子どもは安心して自分の世界を見せてくれます。
それが、トラブルの早期発見につながるのです。
年齢に合わせた「日常でできる」安全な関わり方
小学校低学年〜中学年、どうやってネットやSNSに関わらせる?
小学生の低学年では、まだ自分のスマホを持っている子は多くはなく、家族のスマホやタブレットなどでネットやSNSを見ることが多いでしょう。この頃は、難しいネットの知識を教える必要はありません。まずは「環境」を整えることで、多くのリスクは避けられます。
スマホやタブレットでインターネットやSNSを使うときは、まず、どこで・どう使うかという物理的な環境を整えることが大切です。たとえば、画面を見るのは必ずリビングなど大人の目が届く場所にする、夜は決めた場所(充電ステーション)に置いて寝室へは持ち込まない、といった、ご家庭のルールがあるだけでも安心度がぐっと高まります。
あわせて、「何を見られるか」という機能面の環境も整えておきましょう。時間制限を設けたり、アダルトコンテンツや過激な内容にアクセスしないようフィルタリングを設定したり、アプリの初期設定を親子で一緒に確認したりすることで、子どもを不必要なコンテンツやトラブルから守ることができます。
物理的な環境と機能面の環境を両方整えておくことは、難しい専門知識がなくても今日からできる、SNS・ネットトラブルの予防策です。

小学校高学年〜中学生頃、どうやってネットやSNSに関わらせる?
小学校高学年以降になると、自分のスマホを持つ子も増えはじめます。少しずつ、自分で判断する練習ができるようになります。
フィルタリングなどの機能面での対策はしつつ、制服姿で撮影すると何が起こるのか、プロフィールに学校名を書いたらどうなるのか、位置情報をオンにするとどんな危険があるのか。そうした事例を、怒らずに、日常会話の中で常に伝えていくことが大切です。
また中学生以降は、自分でSNSやネット環境を管理できるようにしていく時期でもあります。子どもの成長や理解に応じて、少しずつフィルタリングやルールを見直しましょう。
また見守りながらも、「困ったらいつでも話してね」という姿勢を保ち、責めずに話を聞くことは、引き続き周りの大人がすべきこと。そのゆるやかな管理のもとで、自分でネットやSNSとのつきあい方を学んでいくことが大切です。
「SNSで知り合った相手と会いたい」にどう答える?
「ダメ」よりも「どう判断するか」の視点を
ネットやSNSでつながった人と会いたい──という話題は、今や珍しくありません。
子どもの年齢や理解度によっても異なりますが、小学生のうちは、子ども自身が相手を信用できるかどうかを判断するのはとっても難しくなります。また中学生であっても、保護者としては心配ごとでしょう。
しかし、そこで頑なに「絶対、ダメ!」と言ってしまうと、子どもは隠れて行動するようになります。
松山さんは、「判断する方法を一緒に考えることが安全につながる」と言います。
相手のプロフィールや投稿内容に不自然な点はないか、メッセージのやりとりに違和感はないか、強引ではないか、急かされていないか──。
こうした疑って見極める視点を持つことについて、普段から会話しておくことで、子ども自身が「この人はちょっと危ないかもしれない」と、感覚的に判断できるようになります。
もし保護者がどうしても不安を感じるときは、
「まずは通話で話してみて、安心できる相手かどうか様子をみよう」
「もう少し、落ち着いて判断できる材料を集めてからでも遅くないよ」
といったように、段階を踏んで確認する方法を提案することもできます。こうした「段階的な判断」を子どもと一緒に考えていくことは、無知のまま危険に近づいてしまうよりも、ずっと安全な選択肢を生み出してくれます。
オンライン上のやり取りについてのルール(例)
ネットやSNS上で誰かをやり取りすることについては、具体的なルールを決めておくと子どもには伝わりやすいです。また日頃からこのルールを意識しておくことで、相手が安全な人なのかどうか判断する方法を少しずつ身につけることができます。
- 相手から「秘密にして」と言われた情報は必ず保護者に共有する(秘密を要求する時点で危険信号)
- 通話やビデオ通話をする前に、必ず保護者に一言伝える
- 「顔を見せて」「写真送って」と言われても送らない。その時点で、即保護者に相談する
- 学校名・制服・自宅周辺が写る写真は送らない/投稿しない
- SNS上で“褒められすぎる”相手には距離を置く(承認欲求につけ込む手口を防ぐ)
SNSやネットで知り合った人と会うことについてのルール(例)
また、SNSなどで知り合った人と会うことについても、ルールを段階的につくっていくことができます。
- 小学生のうちは、実際の友だちや知っている人以外の人とSNSで知り合った場合は、保護者に伝えること
- 小学生のうちは、SNSで知り合った人とは会わないこと
- 小学生のうちは、基本的にはSNSで知り合った人とは会わないが、どうしても会いたい場合は保護者に相談すること
- 小学生、中学生に関わらず、SNSで知り合った人に、写真や個人情報を送らない
- 中学生以降になり、SNSで知り合った人と実際に会いたい場合は、保護者に相手の情報や行先を伝えたうえで、一人で会わない、周りに人がいる場所で会うこと
など、各家庭の考えや子どもの成長・理解度に合ったルールをつくっておくと良いでしょう。
スマホやSNSは「突然自由にさせるもの」ではなく、少しずつ練習しながら使うもの
「何歳でスマホを持たせるべき?」という質問に、絶対の答えはありません。
松山さんは、段階的に練習していくこと、という考え方をおすすめします。
小学校低学年で短い時間から始め、小学校高学年〜中学生で判断力を育て、必要に応じてルールを調整しながら、自分で判断・選択して使っていけるようになる。
SNSは、大人でさえ使い方を間違えることのある世界。だからこそ、いきなり自由にするより、少しずつ慣れていく段階があっていいのだと感じます。
SNS時代を生きる子どもに必要な力とは?
「コミュニケーションスキル」はこれからの社会でより大切になっていくスキル
松山さんが考える「いきるスキル」とは、ずばりコミュニケーションスキルだといいます。
相手の気持ちを思いやること、自分の気持ちを適切な言葉で伝えること、そして誤解を生まないよう距離感をつかむ力──。
こうした力は、対面の会話だけでなく、SNSのようなテキストでのやりとりでも同じように必要とされます。
そして、このコミュニケーションスキルは、特別な教育をしなくても、保護者が前向きに寄り添い、子どもと一緒に考えていくことで自然と育っていくものだと松山さんは話します。
「SNSは、怖いから禁止」ではなく、「どうすれば安全に使えるか、一緒に考えよう」。
そんな姿勢で向き合うことで、子どもは安心して相談できるようになり、SNS・ネットのリスクから自分を守る力を身につけていきます。
また同時に、SNSを通して新しい興味や出会いを得たり、世界を広げたりするチャンスも広がっていきます。保護者の前向きな関わりこそが、子どもの選択肢を増やし、未来の可能性につながっていくのです。
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ファミリールールをみんなで守ろう!
SNS・ネットについてQ&A

この記事を監修した人
松山 真衣
株式会社EmpaC代表。大学および専門学校講師。
マーケティング領域を中心に活動し、2021年にSNSマーケティングを専門とする株式会社EmpaCを設立。企業向けにSNSリテラシーや炎上リスク回避に関する研修を行うほか、大学や専門学校にて講師を務める。
また、ネット社会に生まれた子どもたちが正しい知識をもってSNSと向き合えるよう、ットリテラシーやスマホ・SNSとの付き合い方をテーマに講演活動をスタート。葛飾区児童相談所主催の保護者向けセミナーや岐阜県大垣市では中高生向けの授業も担当している。





