<子どもの睡眠 後編>「タイムマネジメント」を取り入れて、睡眠を戦略的に活用しよう!

子どもの睡眠東大岸先生後編
  • URLをコピーしました!

監修者:東京大学大学院医学系研究科講師 岸 哲史(あきふみ)

子どもの睡眠不足は、社会的な影響やデジタルデバイスの普及など、様々なことが要因となって起こります。

そこで、東京大学大学院医学系研究科の講師で、「子ども睡眠健診プロジェクト」メンバーの岸哲史さんに、子どもの睡眠を改善するための具体的なアプローチをお聞きしました。

目次

子どもの睡眠の乱れを改善するアプローチ「タイムマネジメント」

社会的な影響やデジタルデバイスの普及などで、子どもの睡眠不足や「社会的時差ぼけ」といった課題が浮き彫りになっています。その状態を引き起こしているのが、平日と休日の「睡眠中央時刻」(※)のズレです。

(関連記事:「子どもの睡眠前編」で、社会的時差ぼけについて詳しく説明しています。)

(※)入眠時刻と起床時刻の中間点

子どもの睡眠の質や量を向上させるには、「平日の就寝時間を早めて睡眠時間を確保すること」と「休日の夜更かしを避けて『睡眠中央時刻』を揃えること」がカギとなります。

それに加えて、「24時間をトータルコーディネートするタイムマネジメントが重要」と岸先生。具体的な方法を時間帯別に見ていきましょう。

※ クリックして拡大

朝:体内時計をリセットする

「良い睡眠は朝から始まると考えてもらってもいい」と岸先生が言う通り、1日の中で重要なのが、朝の過ごし方です。

まず、できるだけ決まった時間に起きて、夜に必要な「睡眠物質」をためておきます。起床後に太陽の光を浴びて、朝食をしっかりとりましょう。これにより、体内時計がリセットされ、睡眠に深く関係するメラトニンの分泌を促します。

この「起きる」「光を浴びる」「食べる」という流れを意識することが、1日のリズムづくりにつながります。

昼:適度な運動で睡眠物質をためる

日中は体を動かし、十分な身体活動量を確保することで「睡眠物質」がたまりやすくなります。ハードな運動ではなく、少し心拍数が上がる程度の軽い運動を習慣づけるといいでしょう。

昼寝はしてもいいですが、長く取りすぎるとせっかくたまった睡眠物質が減ってしまい、夜間の睡眠の質が下がってしまいます。昼寝をする場合は、午後3〜4時までに20分程度で切り上げるようにしましょう。

夕方以降:カフェイン摂取を控える

カフェインには睡眠物質の働きを妨げる作用があるため、夕方以降の摂取は控えます。コーヒーだけでなく、エナジードリンクや緑茶、紅茶にもカフェインが含まれているため、注意が必要です。

夜:眠りやすい環境を整える

夜に強い光を浴びると脳が興奮し、また体内時計も遅れてしまい、睡眠に悪影響を与えます。スマホの光も同様のため、就寝前はできるだけ使わないようにしましょう。また、照明は白色光よりもオレンジ色などの暖色系にすると気持ちが落ち着き、眠りにつきやすくなるといわれています。

また、思春期になると、子どもの体内時計は自然と夜型になりやすく、平日と休日の生活リズムにズレが生じがちです。特に週末は夜ふかしを避け、睡眠の時間帯を意識して整えることが重要です。

睡眠は、体内時計や睡眠物質といった体の仕組みによって成り立っています。そのため、体が眠る状態になっていなければ、布団に入る時間を早めても眠れないことも。1日の過ごし方を見直し、生活習慣として睡眠を整える視点が必要です。

 自分なりの「ベッドタイムルーティン」を見つけよう

睡眠の質や量を向上させるためのアプローチとしてもう一つ推奨されているのが、「ベッドタイムルーティーン」を作ること。例えば次のようなアプローチがあります。

・就寝時間の2時間前に入浴をする

体温と睡眠には、深い関係があります。お風呂に入って深部体温(体の内側の体温)をしっかり上げておくことは、眠りにつく準備として効果的だとされています。

人は、深部体温が下がっていくタイミングで、自然と眠気を感じやすくなります。眠るころに深部体温が下がることを意識して、就寝時間の2時間前に入浴をするといいでしょう。

・ストレッチをする、好きな音楽を聴く、読書をする

副交感神経を優位することで心身ともにリラックします。小さい子どもには、「お気に入りのぬいぐるみと一緒に布団に入る」という方法もあります。

人によって好きなものや適した方法は異なるため、お子さんに合ったベッドタイムルーティーンを確立するといいでしょう。

保護者自身の睡眠の見直しも

これまでに挙げた睡眠改善のアプローチに加え、もう一つ意識したいのが「家庭を巻き込むこと」です。

「子ども睡眠健診プロジェクト」では、2024年6月に岐阜県下呂市の学校の協力のもと、中学生の親子の睡眠を1週間同時に測る取り組みを実施しました。すると、親子の睡眠の量、質、リズムには高い相関が見られたと言います。

つまり、保護者が早寝早起きだと子どもも早寝早起きであり、親の睡眠時間が長く質が良好だと、子どもの睡眠時間や質も良いということです。これらのことから、「親の睡眠習慣が、子どもに与える影響は大きい」と岸さんは指摘します。

子どもが自分で睡眠リテラシーを身につけて実践することは大切です。それと同時に保護者の睡眠習慣を見直すことが、子どもの睡眠改善のサポートになることも押さえておきたいポイントの一つです。

子どもにとって必要な睡眠スキルとは?

岸さんの生きるスキルは、「睡眠を武器にするスキル」

保護者が睡眠の持つ力を把握し、早い段階で睡眠習慣を整えることで、子どもたちの学力や体力、心の安定につながり、潜在能力を発揮できるようになるのです。

そして、子どもが睡眠を自分の武器として戦略的に活用することができれば、より良い毎日、さらにはより良い未来を作ることにつながります。

子どもの睡眠Q&A

夜9時までには布団に入らせていますが、眠れないようです。どうしたらいいですか?

まずは、1日を通しての「タイムマネジメント」や入眠前の「ベッドタイムルーティン」を取り入れてみてください。それでも改善せずに、睡眠障害が疑われる場合は、適切な検査を受けて治療に入ることが大切です。睡眠の専門医のいる医療機関を受診するといいでしょう。

子どもが自発的に睡眠の改善に取り組むようになる方法はありますか?

本人が睡眠のメカニズムを理解し、納得してもらうことが重要です。さらに、「睡眠がしっかり取れたことで◯◯がうまくいった」といった成功体験が加わると、行動の変化につながりやすくなります。

この記事を監修した人

岸 哲史(あきふみ)

東京大学大学院医学系研究科 講師

2006年東京大学教育学部卒業、2008年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、2011年同博士課程修了。博士(教育学)。2010年米国ニューヨーク大学医学部研究員、2014年東京大学大学院教育学研究科助教、2022年東京大学大学院医学系研究科特任講師を経て、2025年4月より現職。

専門は、睡眠科学、教育生理学。ヒト睡眠ダイナミクスの解析・評価・制御に関する研究に従事。現在は、JST ERATO上田生体時間プロジェクト・グループリーダーとして、子どもの健やかな睡眠状態を知り・育み・護ることを目的とした「子ども睡眠健診」プロジェクトを推進中。

目次