SSTとは?小学生向けソーシャルスキルトレーニングのやり方をご紹介!【無料教材あり】

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執筆:いきるスキル・スクール編集長 三上 麗 一般社団法人READYBOX代表。
元LITALICO勤務。発達障害のあるお子さん向けの教育プログラムの企画・開発などを担当。
現在は、いきるスキル・スクール編集長として、子どもたちの生きる力を育む情報発信に取り組む。

「うちの子、なんでこんなに人との関わりが苦手なんだろう」「どう声をかけてあげたらいいの?」——そんな悩みを抱えている保護者の方や先生方は、きっと少なくないと思います。

実は、子どもが対人関係や集団生活でつまずくとき、その原因は「わがまま」でも「性格の問題」でもないことがほとんど。多くの場合、「やり方をまだ知らないだけ」「知っているけど、実践が足りないだけ」なのです。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、そのやり方を一つひとつ丁寧に教えていく取り組みです。難しそうに聞こえるかもしれませんが、家庭の日常の中でも十分に実践できます。まずは基本の考え方から、一緒に確認していきましょう。

目次

SSTとは 小学生にもわかるソーシャルスキルトレーニングの基本

SSTとはどういう意味?小学生にも伝えやすい考え方

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、「人と一緒に生活するためのスキルを練習すること」です。

子どもにわかりやすく説明するなら、「ゲームのルール」に例えるのが一つの方法だと私は思っています。「ゲームを楽しむためにルールを知る必要があるのと同じように、学校生活やお友だちとの間にも、見えないルールや楽しく過ごすためのコツがある。それをマスターしていくと、自分も周りの人も、集団の中で過ごしやすくなるよ」——そんなふうに伝えると、子どもも「ルールを学ぶこと」として受け入れやすくなります。

小学校に入ると、幼稚園・保育園とは環境がガラッと変わります。

長い時間椅子に座る、給食の配膳をこなす、時間割通りに動く、連絡帳を書く……。こうした一つひとつが「学校で必要なスキル」であり、SSTで練習できるスキルです。大切なのは「そうしなければならない」と押しつけるのではなく、「知っていると、過ごしやすくなる」という視点で伝えることだと私は考えています。

なぜ小学生のうちにSST(ソーシャルスキルトレーニング)が必要なの?

SSTが必要な理由は、「学校生活を円滑にするため」だけではありません。

手を挙げて質問する、困ったときに助けを求める、自分の気持ちを言葉で伝える。こういった「ヘルプの求め方」を子どものうちに知っておくことが、その後の人生で自分自身を助ける大きな力となります。

「ヘルプの求め方がわかると、人生の安心感がぐっと増す」と私は思っています。このスキルは、環境や性格によって自然と身につく子もいれば、なかなかきっかけを掴めない子もいます。だからこそ、小学生のうちから、練習できる機会を作っておくことに大きな意味があります。

実際に私が関わったあるお子さんは、「質問することが苦手」という一面に周囲が気づかないまま高学年まで過ごし、じっくりお話を聞いてみると、実は数学年分の学習内容で理解が止まってしまっていました。 「恥ずかしくて手が挙げられない」のではなく、「どのタイミングで、どうやって手を挙げればいいか」、そして「その後どうやって質問したらいいか」という具体的な方法がわからない状態だったのです。

そこで、まずは「名前を呼ばれたら手をあげる」「3問やったら手をあげる」となどスモールステップを重ねる練習からはじめました。その後、少しずつ「手を挙げた後に、先生に何て言って質問すればいいかを一緒に考える」ステップへと、ひとつひとつできることを積み上げていきました。

 ソーシャルスキルトレーニングとは具体的に何をするのか

SSTで扱うスキルは、実に幅広いものです。テーマごとにソーシャルスキルを整理すると、例えば次のようなものが挙げられます。

学校生活のスキル
  • 椅子に座り続ける
  • 給食の配膳・白衣をたたむ・持ち帰りを忘れない
  • 時計を見て行動する
  • 時間割の見方・翌日の準備をする
  • 連絡帳を書く・提出物を出す
  • 授業中に手を挙げる・質問する
対人関係のスキル
  • 気持ちを言葉にする
  • 順番を待つ
  • 断り方・断られたときの対処
  • 「ありがとう」「ごめんね」を伝える
自己管理のスキル
  • 感情をコントロールする
  • 困ったときに助けを求める(ヘルプを出す)

「何ができていて、何ができていないのかがわからない」という保護者の方はとても多いです。だからこそ、お子さんが今どこでつまずいているのか、その『困りごとのポイント』を細分化して整理してみることが、支援の第一歩になります。

SSTとは 小学生向けソーシャルスキルトレーニングのポイント

小学生向けSSTで最初に心がけたい3つ

SSTに取り組む前に、まず押さえておきたいポイントが3つあります。

① 困りごとを小さく分解する

「友だちとうまく関わるのが難しい」と一口に言っても、その中にはたくさんのスキルが含まれています。たとえば、順番を待つこと、断られたときにその気持ちを自分で受け止めること、あるいは勝負のあるゲームに負けても次の行動へうつせることなど、お子さんが今直面している「困りごと」をできるだけ細かく分けてみることが支援の第一歩です。「今日は10秒待てたね」というレベルから始めて、ゆっくりと階段を上がっていく。そのくらいのスモールステップで考えていくことが、SSTを無理なく続けるうえでとても大切です。

② 変化や取り組みを言葉にして返す

「褒める・褒めない」についてはさまざまな意見がありますが、大切なのは「その子の今の姿を言葉にして返すこと」です。「昨日よりこれが言えるようになったね」と、具体的な変化をそのまま言葉にして伝えてみる。あるいは、「今日は練習してみようと思えたんだね」と、結果だけでなく、取り組もうとしたこと自体に視線を向ける。

もちろん、子どもの調子は日々変わります。昨日できたことが今日はできなかったり、少し前に戻ってしまったりすることもあるのが当たり前です。そんなときは、無理に進まずに「今は休むタイミング」と捉えて、ゆっくり一息ついて大丈夫。

完璧を求めず、本当に小さな一歩や、やろうとした姿勢そのものを見つめて言葉を交わしていく。そうした安心感の積み重ねが、子どもの次への意欲に繋がっていきます。

③ 大人自身が心の余裕を持つ

SSTは、関わる大人自身の心の状態や、その日の体調にも大きく影響されます。大人が疲れているときや、気持ちに余裕がないときに無理に向き合おうとすると、お互いにしんどくなってしまうものです。

「今日は自分も元気だし、できそうだな」と思えるときに、ゆるやかに取り組んでみる。大人自身が自分の「一人の時間」や心の余白を大切にしながら、進められるときに進めていくこと。それこそが、無理なく長続きさせるための一番のコツです。

家庭でできるソーシャルスキルトレーニングの考え方

SSTというと専門機関でやるものというイメージを持ちがちですが、日常の中でできることはたくさんあります。

たとえば給食の配膳の練習は、夕飯のときにお盆に乗せて一緒にやってみることで家庭でも再現できます。時間割を見て翌日の準備をする練習も、ランドセルの中身を一緒に確認するという日常の延長でできます。

なかでも私が特に大切だと思うのが、「気持ちを言葉にする時間」を設けることです。

1日5分でいいので、「今日あったこと・どんな気持ちだったか」を話す時間をつくってあげてください。「こういう時に嬉しかった」「悲しかった」「イライラした」——そういう言葉を安心して出せる場所が、家庭にあることがとても重要です。

また、「今日の服はどっちにする?」と選ぶ場面をつくることも効果的です。「嫌なときは嫌と言っていいんだよ」という言葉のシャワーを日常的に浴びさせてあげることが、自分の気持ちを伝える力につながっていきます。

SSTを難しく考えずに始めるには

構えすぎないことが、いちばんのコツです。

まず試してほしいのは、学校で、お友だちに使ってほしい言葉を、親が家の中で積極的に使うことです。子どもは親の言葉をコピーしやすいので、大人が日常の中で見せていくことが自然なトレーニングになります。「ありがとう」「ごめんね」「嫌だった」「嬉しかった」。こういった言葉を、親自身が意識して使っていく。それだけでも、小学生のソーシャルスキルの土台をつくる立派なSSTです。

SST 発達特性との関係と支援の考え方

発達に特性のある子どもとSSTの関係

子どもたち一人ひとり、得意なことや少し苦手なことのバランスはさまざまです。時には、そのバランスの「凸凹」が少し大きく感じられることもあります。

自分一人ではちょっぴり乗り越えるのが難しい場面があるとき、周囲に「教えて」「手伝って」とヘルプを出せる関係性を誰かと築いておくこと。それは、どんなお子さんにとっても、これから安心して日々を過ごしていくためにとても大切なことです。

SSTを通して、お互いの心地よい距離感やコミュニケーションの方法を少しずつ育んでいくことは、「何でも自分一人で抱え込まなくてもいいんだ」と思える、あたたかい環境づくりにも繋がっていきます。

ASD・ADHDそれぞれの困りごと

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもに多い困りごと(参考:LITALICOライフ)

ASDのお子さんには、対人関係や「空気を読む」ことへの難しさが見られることが多くあります。一例ではありますが、相手を傷つけてしまう言葉がとっさに出てしまったり、勝ち負けへのこだわりが強くてゲームで負けると激しく怒ってしまったりすることなどもあります。また、特定の色・音・匂いへのこだわりや過敏さも特性として表れることがあります。

ADHDや、その他の特性を持つ子どもの困りごと(参考:LITALICOライフ)

一見すると、大きな困りごとがないように見えるタイプのお子さんは、周囲がその大変さに気づきにくいという一面があります。
たとえば、自分の気持ちを言葉にするのが難しくて涙が出てしまったり、せっかくやった提出物を出すタイミングを逃してしまったり、連絡帳に書き留めることが難しかったり。こうした姿が続いていると、「少し内気なのかな」「のんびり屋さんなのかな」と見過ごされてしまうことがあります。
本人の頭の中ではたくさんの考えや「やりたい気持ち」が一生懸命まわっているのに、それをどうやって外に表現(アウトプット)したらいいのか方法がわからなくて、心の中で苦しくなっている。そんなお子さんも、実際は少なくありません。

家庭や学校で意識したい支援のポイント

私が大切にしているのは、「できないところをすべて伸ばそうとしなくてもよい」という視点です。

日常生活の中で本人が大きく困らないくらいまで、ゆるやかに育っていけばそれでOK。そういう考え方が、周囲の大人にも子ども自身にも心地よい余裕をもたらします。たとえば、感情が大きくあふれて人に手が出てしまうお子さんに対して、「言葉で気持ちを伝えられること」を先々の目安としながらも、まずは「クッションをぽんぽんして気持ちを落ち着ける」というステップを踏めるだけでも、それは本当に大きな前進です。

SNSや周囲の基準に引っ張られすぎず、目の前のその子にとって「まずどこまでできたら、お互いに安心して過ごせるか」という目安を一緒に見つけていく。その子自身の姿をそのまま見ることが、何より大切です。

また、「3歩進んで2歩下がる」のが当たり前、と思っておくことも大人の心をラクにしてくれます。大人も同じですが、昨日できたことが今日できないのは、お子さんが少し疲れていたり、心に余白がなかったりするサインかもしれません。「まあ、そんな日もあるよね」と、大人側もがんばりすぎず、すり減らないマインドを持つことが、お互いに心地よく続けていくためのコツです。

毎日の習慣にするための工夫としては、「できたねシール」のように目に見える形でお楽しみを取り入れてみたり、毎日のお風呂の時間に1回だけクイズ形式でやってみるなど、すでにある生活のルーティンにそっと組み込んでみるのもおすすめです。一気にやろうとせず、小さな一歩を少しずつで十分です。

SSTトレーニング 小学生向け5つの手順

SSTを家庭や支援の場で実践するときの、全体的な流れをご紹介します。ここでは「お友だちにおもちゃを『貸して』と言う」という場面を例に、5つのステップを見ていきましょう。

手順① 目標設定

「今回は、お友だちにおもちゃを『貸して』と言ってみる」というように、実際の具体的な行動をひとつだけ決めます。「みんなと仲良くする」といった抽象的な目標ではなく、子どもがパッと頭の中でイメージできる「ひとつのアクション」に絞り込むのがポイントです。

このとき、大人の頭の中で「少しハードルを下げる選択肢」「少しステップアップする選択肢」をあらかじめイメージしておくと、その日の子どもの調子に合わせて柔軟に対応しやすくなります。

  • 少しハードルを下げるなら: 「貸して」と言葉で言うのが難しそうなときは、「お友だちの近くに行って、おもちゃを指さしてみる」「大人の手を引いて一緒に行く」といった、もっと小さなアクションから始めても大丈夫です。
  • 少しステップアップするなら: 言葉で言うことに慣れてきたら、「お友だちが使い終わるのを少し待ってから声をかける」など、前後の関係性を少しプラスしてみるのも楽しいです。

お子さんの今の気分や体調に合わせて、「これくらいなら、ちょっとやってみてもいいかな」と思える心地よいサイズにいつでも変えられるよう、余白を持って設定してみましょう。

手順② お手本を見せる(モデリング)

まずは大人がいくつかのパターンをやってみせます。「こんなふうに声をかけられたら、相手はどんな気持ちになるかな?」「自分だったらどう感じる?」と、クイズのように一緒に観察してみるのもおすすめです。長い言葉で説明するよりも、視覚的なイラストを使ったり、実際の声のトーン(音)や、その場の雰囲気を体感したりしながら、お子さんがイメージしやすい方法を一緒に探せるとさらに効果的です。

手順③ 実際にやってみる(ロールプレイ)

お手本を見たら、今度は子どもが実際に試してみる時間です。うまく言葉が出なくても、途中でやめてしまっても全く問題ありません。「ここは間違えても、お休みしても大丈夫な場所」という安心感を何より大切にしてください。まずは大人がリラックスした相手役になり、ゲーム感覚で心地よく試せる環境をつくっていきましょう。やるかやらないかも、子どもの意思を尊重します。

手順④ 具体的に褒める(フィードバック)

試したあとは、「大人が上から評価して褒める」のではなく、素敵だったところを具体的に言葉にして共有します。「今の『貸して』の言い方、声の大きさもちょうど良くて、とっても聞きやすかったよ!」というように、何が心地よかったのかをそのまま伝える感覚です。「お利口だね」「上手だね」という表面的な評価よりも、具体的な事実を伝える方が、お子さん自身の「これでいいんだ」という安心と自信に繋がります。

手順⑤ 日常の中で実践する

練習したことを実際の生活の中で使っている姿を見かけたら、その瞬間の嬉しさを一緒に味わいます。「さっき、自分で『貸して』って言えたね!」と、その事実をそっと共有する一言が、次への自然な意欲を生みます。もしうまくいかない日があっても、それはスキルがないのではなく、ただ疲れていたりタイミングが合わなかったりしただけ。「そんな日もあるよね」「また気が向いたときにやってみよう」と受け止め、大人の側も焦らず、環境を優しく整えながら見守っていきましょう。

※対人関係に特化したトレーニングの詳細は、後半記事(実践編)で詳しくご紹介しています。

まとめ:子どものソーシャルスキルについて大切にしたい3つのこと

最後に、ソーシャルスキルについてポイントを3つ整理します。

  • SSTは「過ごしやすくなるためのコツ」 できないことをすべて伸ばそうとするのではなく、日常生活で本人が大きく困らないくらいまで、小さな行動に分けてゆるやかに育んでいけばそれでOKです。
  • いちばんのお守りは「ヘルプを出せる力」 自分一人で何でも抱え込まずに、周囲に「教えて」「手伝って」と言える関係性を誰かと築いておくことが、どんなお子さんにとってもこれからの安心に繋がります。
  • 大人の「心の余白」を最優先に 昨日できたことが今日できない日があっても、「そんな日もあるよね」と受け止めて大丈夫。大人自身が一人の時間や体調を大切にしながら、進められるときに進めていきましょう。

完璧を目指さず、本当に小さな一歩や、やろうとした姿勢そのものをそっと見つめていく。その安心感の積み重ねが、子どもの「やってみたい」を自然に育んでいきます。

具体的な実践のアイデアや続けるコツは、後半記事(実践編)でさらに詳しくご紹介しています。ぜひあわせてお読みください。

この記事を監修した人

三上 麗(うらら)

立教大学経営学部国際経営学科を卒業。新卒で株式会社LITALICOに入社し、発達障害のあるお子様への支援や授業プランニング等に携わる。

2021年に一般社団法人READYBOXを設立。子どもたちが、境界線(バウンダリー)や同意、自己表現、他者との関わり方を含む包括的性教育について学ぶ機会を届けている。

「自分も相手も大切にできる社会」を目指し、子ども・保護者・教育関係者に向けて発信・講演している。 いきるスキル・スクール編集長。

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