ショート動画の依存やSNS性被害…スマホに潜む「見えないリスク」から子どもを守るため備え方

監修者:Adora株式会社 藤田医科大学客員教員 冨田 直人
「スマホが欲しいって言われるけど、いつから持たせる?」
「SNSや動画に夢中で、どうやってやめさせたらいい?」
そんな不安を抱えている保護者の方は、決して少なくありません。今や子どもたちにとってインターネットは、遊び場であり、学びの場。もはや「生活インフラ」とも言える存在です。
今回は、デジタル時代を生きる子どもたちの安全と保護者の適切な見守りのあり方について、AI技術を活用したスマホのトラブル検知アプリの開発や、ICTを通じた子どもの安全な環境づくりに力を入れる、Adora株式会社代表の冨田直人さんにお話を伺いました。
※この記事は、1月13日開催のオンラインセミナー「子どもとスマホ」の内容をもとに構成・編集しています。
「一方的に取り上げる」から「親子で安全な使い方を練習する」へ
GIGAスクール構想による端末配布もあり、子どもたちのネット利用は急拡大しています。最新の調査では、10歳以上の青少年のインターネット利用率は98.2%に達し、小学生でも7割以上が日常的にネットに触れています(※)。
「自分専用のスマホを持つ子は12歳を境に急増しますが、大切なのは、一律に制限して遠ざけることではなく、どう安全に使いこなすかという力を親子で一緒に育てていくことなんです」と冨田さんは語ります。
行政や世界的な流れも、単に子どもからスマートフォンを「制限・禁止」するフェーズから、「リテラシーをどう高めるか」「どう安全に使いこなすか(見守るか)」という方向へシフトしているそう。
社会に出る前の練習期間として、家庭でスマホとの付き合い方を学ぶ。そんな「親子で一緒にステップアップしていく」視点が、今、何よりも求められています。
※出典: こども家庭庁 令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
「やめられない」には理由がある。ショート動画が脳に与える影響
最近、特に深刻化しているのが、YouTubeショートやTikTokといった「ショート動画」への依存リスクです。
冨田さんは、これが子どもの脳、特に「前頭葉」の発達に与える影響に警鐘を鳴らします。
脳の「ブレーキ」が効かなくなる仕組み
ショート動画は、次々と新しい刺激が得られるように設計されています。次にどんな動画が来るか分からない「ワクワク感」が、脳の「報酬系」を過剰に刺激し、快楽物質であるドーパミンを放出させるそうです。
「この快楽を感じる脳の『報酬系』は早期に発達する一方で、衝動を抑えたり、感情をコントロールする『前頭前野』は子どもの頃は未発達です。このアンバランスが、子どもを依存症的行動へと駆り立てるのです。」
また、短い動画に慣れると、結果がすぐに出ない物事や、長い文章を読むことにストレスを感じやすくなります。これは、学校や日常生活での深い思考を妨げる要因になりかねません。「依存」は意志の力だけで防げるものではないからこそ、脳の仕組みを知り、リスクを実感することが大切です。
※ 出典: Nature誌 2024 / 東北大学 川島隆太教授研
「学んだことが身につかない?」スマホ使用時間と学習効果の意外な関係
学力への影響についても、冨田さんは統計的なデータから見えてくる事実を示してくれました。
「東北大学の川島隆太教授らが仙台市と協力して行った調査によると、衝撃的な結果がみえてきました。『家庭で自学自習をしていても、スマホ等の使用時間が長いと、その学習効果が十分に発揮されない可能性がある』という結果です」
データによると、たとえ家庭で2時間以上学習していても、スマホ等を3時間以上使っているグループは、学習時間は短くてもスマホを全く使わないグループよりも、正答率が低いという結果が出ています。スマホによる強い刺激や、勉強中の通知による細切れの集中力が、本来脳に定着するはずの学習内容を阻害していると考えられます。
また、平日の勉強以外でのスマホ等の使用時間と学力の関係性をみると、スマホ等の1時間以上の使用を境目に、4科目(国語、算数・数学、理科、社会)の偏差値が下がっていくという結果になりました。
スマホとの付き合い方を整えることは、本人の努力を成果に結びつけるために、とても大切な土台作りなのです。

※出典:「スマホ等の使用時間と学力の関係」2017年度、小学5年生~中学3年生(41,084人)。4科目(国語、算数・数学、理科、社会)の平均偏差値(仙台市教育委員会 / 東北大学 川島隆太教授)
※「持っていない」「全く使わない」が「1時間未満」より平均偏差値が低い理由のひとつとして、「自己管理能力が高い子どもが1時間未満の使用に収めている」と考えられている。(参考:「東北大学加齢医学研究所 川島教授 / 榊助教に聞くスマホ依存の危険性」アデッソ)
SNSに潜む性被害の危険。巧妙な「グルーミング」の手口を知る
保護者が恐れていることの一つが、SNSを通じたトラブル、性被害でしょう。特に注意が必要なのが、加害者が時間をかけて子どもを手なずける「グルーミング」という行為です。
加害者は、オンラインゲームやSNSの趣味の投稿を通じて、「優しくて話のわかる人」として近づいてきます。
- 信頼関係の構築: 親の愚痴を聞いて同調したり、趣味を褒めたりして、数週間から数ヶ月という長い時間をかけて距離を縮めます。
- 孤立させる: 「二人の秘密だよ」という言葉で、子どもを周囲の大人の目から巧妙に孤立させていきます。
- 自画撮り被害への誘導: 十分に信頼させたところで、「もっと仲良くなりたいから、今の格好を写真で送って」と、裸などの不適切な画像の送信を求めてきます。
一度ネットに流出した画像は、完全に消し去ることができない「デジタル・タトゥー」となり、子どもの将来を長く苦しめることになりかねません。特に、親の目が届かないダイレクトメッセージ(DM)や、オンラインゲーム内の非公開チャットは、加害者にとって格好の「密室」となります。
打ち明けられない心理に漬け込む卑劣さ
加害者は「親にバレたら怒られるよ」「スマホを取り上げられるよ」と脅し、子どもが親に言えない心理を巧妙に利用します。
だからこそ、日頃から「何があってもあなたの味方であること」を伝え、親子で安心して話せる関係を築いておくことが重要です。
失敗しないルールの作り方。大切なのは「納得感」と「親からの貸与」という認識
スマホを持たせるとき、ルールをうまく運用するコツを冨田さんに聞きました。
「納得感」のある話し合い
「ダメだからダメ」ではなく、例えば「なぜ、寝る前は控えた方がいいのか」「なぜ、知らない人とのDMがダメなのか」を、健康への影響やリスクをもとに話し合いましょう。子ども自身が「自分のために決めたんだ」と納得できるプロセスが不可欠です。
「端末は親からの借り物」という共通認識
スマホは「一度買い与えたら子どもの自由」ではなく、「親が契約してお金を払い、子どもに貸し出しているもの」という認識を、持たせる前の段階から共有しておきましょう。
「このスマホは、お父さんやお母さんが契約し、安全を守るためにあなたに貸しているものだよ」と伝えておくことで、持たせる前の約束事も、持たせた後の見守りも、お互いに納得感を持って進めやすくなります。
成長に合わせてルールを更新する
ルールは一度決めたらおしまいではありません。学年が上がったり、上手に使えるようになったりしたら、親子で「スマホ会議」を開いてルールを見直していきましょう。
もしもトラブルが起きた時、子どもを救う親の「魔法の言葉」
もし、お子さんがネットでトラブルに巻き込まれたり、不適切な行動をとってしまったりした時、どう対応すればいいでしょうか。
「一番避けたいのは、いきなり激しく叱ったり、スマホを即座に取り上げたりすることです。それをすると、子どもは次に何かあっても絶対に隠すようになります」
冨田さんが推奨するのは、勇気を出して打ち明けてくれた子どもへの言葉です。
「話してくれて、ありがとう」
「被害を打ち明けるのは、とてつもなく勇気が必要です。まずはその勇気を受け止め、『どんなことがあっても、あなたの味方だよ。一緒に解決しよう』と、伝えてください。その安心感こそが、子どもにとって最大の守りになります」

監視ではなく「見守り」を。AI技術でプライバシーと安全を両立する
親が24時間、子どものスマホをチェックし続けるのは不可能です。そこで冨田さんは、愛知県警察や渋谷区とも実証実験を行っている、AIを活用した「新しい見守り」を提案しています。
「私たちが開発した『コドマモ』は、AIが『危険な兆候』を検知したときにだけ、保護者に通知が届く仕組みです」
不適切な画像の検知: 性的画像をAIが検知し、撮影・受信を未然に防ぎます。
「新しいつながり」の把握: 直近7日間に会話のなかった相手とのやり取りを検知します。
危険なチャットSOS: いじめや誹謗中傷の兆候をAIが検知し、保護者に警告します。
「適度な距離感を保ちつつ、決定的な被害はテクノロジーで防ぐ。この安心感があるからこそ、親子で前向きな対話ができるようになるのです」
最強のリテラシーは「親子の会話」の中に
スマートフォンは、正しく使えば世界を広げ、子どもの可能性を無限に引き出すツールでもあります。スマホをただ遠ざけるのではなく、まずは親の端末でもいいので、一緒に楽しんだり、時には、スマホを使う中での失敗を共有しあったりするのも良さそうです。
冨田さんは、『たとえトラブルが起きても、安心して相談できる大人がいることこそが、子どもにとって最大の守りになる』といいます。その日常のコミュニケーションの積み重ねこそが、子どものスマホリテラシーを向上し、どんなフィルタリングよりも強力なお守りになるでしょう。
最後に、冨田さんにとって「いきるスキル」とは何か?お伺いしました。
「インターネット社会における重要な生きるスキルの1つは、スマートフォンのメリットとデメリットをうまく活用/コントロールするスキル」だということ。
「この記事で挙げているようなデメリットをケアしつつ、情報取得の効率化などのメリットを上手に活用できれば、より良く生きることに繋がるのではないでしょうか。」
スマホリテラシーQ&A

この記事を監修した人
富田 直人
Adora株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。
文部科学省アントレナーシップ推進大使。
インド・ニューデリーのカフェの店長として勤務していた際の顧客と同社を起業。チャイルドカウンセラー資格保有。





