反抗期は「困りごとのサイン」10代の不安定な心を支える、大人の関わり方

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監修者:押岡 大覚先生(九州女子大学 人間科学部 教授)
取材:一般社団法人READYBOX 代表 三上 麗(うらら) 
協力:特定非営利活動法人メンタルヘルス環境向上プロジェクト

「最近、急に口数が減った」「理由もなくイライラして、口が悪くなった」

小学校高学年から中学生にかけての思春期、子どもの変化に戸惑い、孤独な不安を抱えている保護者や先生方は少なくありません。

いま、10代のメンタルヘルスにはどのような特徴があり、私たち大人はどう寄り添えばよいのでしょうか。九州女子大学 人間科学部 教授であり、臨床心理士・公認心理師として長年現場に立ち続けている押岡 大覚(おしおか だいすけ)先生にお話を伺いました。

目次

いまの10代が抱える「しんどさ」の正体

思春期は、Hall(1904)が『疾風怒濤(Storm and Stress)』と表現した時期で、心も体も不安定になりやすい時期です。そうした特徴を踏まえておくと、今の10代の状況もより理解しやすくなると思います」と押岡先生は言います。

 「この子が弱いから」ではない。発達段階ゆえの嵐

「10代というのは、もともと心も体も不安定になりやすい時期です。これは発達の流れから見ても自然なことで、いわば『嵐』の中にいるようなものです。だからこそ、この子が弱いから不調になったのだと本人の責任にしてしまうのではなく,まずはそういう時期なのだと捉えることが大切です」

押岡先生が感じるのは、今の10代特有の「しんどさの現れ方」です。

「今の10代を見ていると、しんどさが長引きやすいことが一つの特徴として目立ちます。気分の落ち込みやイライラ、不安といった『心の不調』だけではなく、眠れない、朝起きられない、頭痛やめまいがするといった『身体の不調』が、実は心理的不調のサインとして表に出ていたのだと分かることも少なくありません。

そして、そうした『心身の不調』が長引きやすい環境が、今はそろってしまっているように思います。睡眠や休息、安心できる人間関係といった回復の土台になるものが、とても揺らぎやすい状況にあるように感じます」

「大人になりたい子ども心」と「子ども扱いの大人・社会」との間で

思春期には特有の心理的な葛藤があり、それが複雑に絡み合っています。これについては、生物的・心理的・社会的という三つの視点から考えるとわかりやすいでしょう。

生物的に見ると、思春期はホルモンの影響もあって、本人の意思とは関係なく身体の変化が次々に起こり、身体は急速に大人に近づいていきます。いわゆる第二次性徴です。すると、自分でできることも増え、心理的には「もう大人や社会に頼らなくても大丈夫だ」と思いたい気持ちが強くなっていきます。ところが、大人や社会からは、心理的にも社会的にもまだまだ子どもとして扱われます。

押岡先生は「このギャップの中にあって、思春期はイライラや不安、無気力が生じやすい時期なのだということを理解しておく必要があります」と話します。つまり、この時期の子どもが不安定になるのは、決して特別なことではなく、ごく自然な反応なのです。だからこそ、周囲の大人がそのことを理解しておく必要があるのです。

回復の土台を揺るがす「現代社会の要因」

では、なぜ現代の子どもたちは、これほどまでに回復の土台が揺らぎやすいのでしょうか。押岡先生は、現代特有の社会的背景として,主に二つの要因を挙げます。

① 未来は誰にも分からないはずなのに将来を決めるというプレッシャー

「これは今も昔も変わらない部分ではありますが、子どもたちはかなり早い段階から進路を決めるよう求められやすいです。大人ですら不確かな“今”を生きているのに、小学校高学年や中学生の頃から、『今やらないと大変なことになるよ』『進路はどうするの』といった、大人や社会からのプレッシャーにさらされています。

経験も知識もまだ十分ではない中で、繰り返し『先のことを考えなさい』と言われ続ければ、不安が強くなるのは自然なことです。そして、不安にさらされ続けることで、気力まで下がってしまうこともあります。これは根性で乗り切れるかどうかという話ではなく、人の心の仕組みとして起こりやすい反応だといえるでしょう」

② SNSが奪っていく「休息の時間」と形成される多層的な人間関係

現代の10代にとって、SNSはすでに生活の一部であり、切り離して考えることはできません。ただし、それがメンタルヘルスに及ぼす影響はとても複雑です。

「今の若者の人間関係は多層的です。学校等での対面による直接的な対人関係に加えて、SNS上でのつながりが何層にも折り重なっているような状態です。

かつては、学校から帰れば、自宅という私的な空間の中で、家庭外の人間関係からいったん離れ、自分一人の時間を持つことができました。しかし今は、DM(ダイレクトメッセージ)を含め、SNSを介したつながりが続いてしまいます」

「この多層的なつながりには、一度つながると非常に切れにくく、心理的にも切りにくいという特徴があります。通知は来ていないか、誰が“いいね!”をしてくれたのか—してくれていないのか—等、何かを気にする時間が圧倒的に増えました。自意識も高まりをみせる思春期に、更に、SNSを気にしながら過ごさざるを得ない状況の中では、本当の意味で休息を取ること、つまり心を休ませる時間を確保するのが難しくなってしまいます」

ただし、押岡先生は、SNSそのものを一方的に悪いものだとみなしているわけではありません。

「SNSが、誰かにとって助けになる面があるのも確かです。ただ、思春期のように心が揺れやすい時期には、使い方によっては、本来確保されるべき休息の時間がSNSによって圧迫されてしまうことがあります。その結果、心を回復させるための時間や余力が削られてしまうことが問題なのです。こうした背景が、10代の『心身の不調』を長引かせる一つの要因になっているのではないでしょうか」

大人にとっての「問題行動」は子どもなりの「対処行動」

子どもが粗暴な言動をとると、大人はつい「反抗的だ」「問題だ」と捉えて、指導したくなります。しかし、押岡先生は異なる視点を提示します。

「大人が『問題行動』だと受け取ってしまう子どもの行動を、その子なりの『対処行動(コーピング)』であると捉えてみてほしいんです。

『問題行動』という視点だけで捉えてしまうと、大人はその行動をなくそうとします。命や身の危険を伴う行動もあり得るため、大人がその行動を減らそうとすること、それ自体は否定されるものではありません。しかし、『対処行動』であると考えれば、何についての対処として、子どもにその行動が現れているのかを大人が考えられるようになります。

一見すると反抗的に見えたり、“大人を困らせようとしている!”と捉えてしまいがちですが、実際には「困りごとがあるんだ」という子どもたちからのメッセージが行動として表に出ているのだと思うんです。そのように見立てる方が現実に即しています」と押岡先生は話します。

避けるべきは「正しさの議論」。まずは「安全と状況把握」を

子どもが激しく反抗したり、物に当たったりすると、私たちはつい「それは間違っている」「親に向かってその態度は何だ」と、正論で諭そうとしてしまいます。しかし、押岡先生は、そこで一歩踏みとどまることが大切だと指摘します。

​​​​​​「​​​​​​暴言を吐いたり、物に当たったりするような言動が見られるときに、その場で説教をして押し切ろうとしたり、言い負かして白黒つけようとしたりするのは、むしろ逆効果です。​​​​​

なぜなら、そのときの子どもはアンビバレントな状態、つまり相反する感情を同時に抱えている状態にあり、理性的に正論を受け止める余裕を失っていることが少なくないからです。そうした場面で『正しさ』をぶつけても、火に油を注ぐような結果になりかねません。かえって子どもの心を追い詰め、より強い壁をつくらせてしまうことがあるのです」

STEP
まずは「安全と落ち着き」を最優先に

では、目の前で子どもが荒れているとき、大人はどのように関わればよいのでしょうか。

まず優先すべきなのは、その場の安全と落ち着きを確保することです。暴言や暴力がある場合には、『それはやめよう』と短く静かに伝える。それ以上に長く説教をするのではなく、まずは興奮を落ち着かせることが重要です。

STEP
「正しさ」よりも「状況の把握」を

お互いに落ち着きを取り戻してからが、本当の対話の時間です。ここで大切なのは、どちらが正しいかを争うことではなく、「今、何が起きているのか」を一緒に確かめることです。

落ち着いたあとで、「何がいちばんしんどいんだろう」と、子どもの気持ちに寄り添ってみる。「お父さん/お母さん/先生にできることはあるかな?」「何か手伝えることがあるなら知りたいから、教えてもらえるとうれしい」といった形で、主導権を子どもに渡しながら、今どんな状況にいるのか、何が嫌だったのかを確かめていきます。
「正しさの議論」はいったん脇に置いて、子どもの今の状況を丸ごと理解しようとすること。その姿勢こそが、子どもが自分から心を開いていくための鍵になります。

見逃さないでほしい「SOSサイン」の見分け方

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子どもが心理的に限界に近づいているとき、どのような変化に気をつければよいのでしょうか。

「増えたこと」と「減ったこと」のそれぞれの変化に着目する

押岡先生が勧める観察のコツは、「増えたこと」と「減ったこと」に目を向けることです。

  • 「増えたこと」: ため息、イライラ、体調不良(頭痛・めまい)、特定の行動の繰り返しなど。
  • 「減ったこと」: 笑顔、会話、家から出る回数、身だしなみへの関心など。

「その子らしさがどう変わったか、つまり、『もともとなかったことが現れた』『もともとあったことがなくなった』という視点で観察することが重要です。これはその子に普段から接している身近な大人にしかできないことです」

専門機関につなぐ「1〜2週間」の目安

その変化が一時的なものか、それとも専門的な支援が必要なものか。​​​​

​​「変化が続いているのか、あるいは前より強くなっているのかを見ていく一つの目安として『1〜2週間』という期間を置いてみるのはよい方法だと思います。ある程度の期間を決めて様子を見ることで、専門機関につなぐかどうかも判断しやすくなります」と押岡先生は話します。

家庭だけで抱え込まない。専門家を「いいように使う」

日本には、『うち(内々・家)のことは外に出さないほうが良い』という感覚が今でも根強くありますが、押岡先生は『身近にいる専門家をいいように使ってほしい』と話します。

「精神科医や心療内科医以外にも、日本には多くの心の専門家(臨床心理士・公認心理師)がいます。実は、相談できる窓口はたくさんあるんです」

まずは身近な「スクールカウンセラー」から

相談先として、まずは「スクールカウンセラー」が活用しやすいでしょう。小学校、中学校、高等学校には、心の専門家が配置されています。学校や学級での普段の様子をよく知っている先生方とも連携しやすいため、就学しているお子さんを育てている保護者にとっては、最も身近な心理職と呼べるのではないでしょうか。

さらに広がる信頼できる相談先と情報源

学校以外の相談先や情報源を知っておくことで、困りごとのケースや深刻度によって選択肢が広がります。

  • 日本臨床心理士会(「臨床心理士に出会うには」検索ページ):
    臨床心理士が在籍している近隣の相談室等を検索できるサイト。
    URL: https://www.jsccp.jp/near/ 
  • マイメンタルヘルス:
    心のケアが必要な方と心理専門職をつなぐサービス。
    特定非営利活動法人メンタルヘルス向上プロジェクトが運営。
    URL:https://mymentalhealth.jp/
  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP):
    精神疾患や心の不調について、最新の正しい知識を得られる信頼できる機関です。
    URL:https://www.ncnp.go.jp/index.php

これからの時代に必要な「生きるスキル」と、大人の役割

最後に、押岡先生に「これからの時代を生きる子どもたちにとって、最も必要な『生きるスキル』とは何か」を伺いました。

「『柳に風、柳に雪折れなし』という言葉があるように、私が『生きるスキル』として必要だと思うのは『しなやかさ』です。強いこと、硬いことは一見頼もしく見えますが、実は“ボキッ”と折れてしまう脆さもあわせ持っています。

一方で、柳の枝は、強い風に吹かれても、重い雪が積もっても、それをうまく受け流し、簡単には折れません。雨風や、ときには暴風雨のような出来事さえも、上手に受け流せる心の『しなやかさ』を育てていくことが大切なのではないかと思います」

また、メンタルの不調を予防するために、日常の中でできることは何かを尋ねると、押岡先生は、それは特別なことではなく「普段からの雑談」だといいます。

「普段の何気ないコミュニケーションや雑談が大事なんです。普段から気軽に話ができる環境を作っておくこと。ただ、雑談それ自体が万能というわけではありません。それでも、そうした積み重ねが、結果として子どもの心を守ることにつながっていくのだと思います」

10代の揺れを本人だけの責任にしてしまうのではなく、家庭や学校、地域全体で支えていくこと。その視点こそが、今の時代に子どもや若者を支える大人たちに求められているのです。

10代のメンタルヘルスQ&A

思春期の子どもが不安定になる原因は何ですか?

発達段階特有の「疾風怒濤 (Hall, G.S., 1904)」の時期であることと、現代社会のプレッシャーが原因と考えられます。

思春期は心身が急激に変化する「嵐」のような時期であり、本人が弱いわけではありません。加えて、SNSにより休息時間がないこと、将来への早期決断を迫る社会的背景などが、子どもたちの心身の回復を遅らせ、不安定さを増強させているように思います。

Hall, G.S. (1904). Adolescence: Its psychology and its relations to physiology, anthropology,   sociology, sex, crime, religion and education, Vol. 1. D Appleton & Company.

子どもの反抗期にはどう接すればよいですか?

「正しさの議論」を避け、まずは「安全と状況の把握」を最優先にしてください。

反抗的な態度は、自立心と不安の間で揺れる「アンビバレント(相反する感情の共存)」への対処行動です。言い負かそうとせず、場が落ち着いた後に「何か手伝えることはある?」と主導権を子どもに渡して、本人の困りごとに耳を傾ける姿勢が大切です。

メンタル不調のサイン(SOS)は何ですか?

「もともとなかったものが現れた」「もともとあったものがなくなった」の「変化」を確認してください。

イライラやため息、頭痛・めまいなどの体調不良が「増えた」、あるいは笑顔や会話、身だしなみへの関心が「減った」といった変化です。これらのサインが1〜2週間継続している場合は、専門機関への相談を検討する一つのタイミングと考えて良いでしょう。

子どもの心の悩みはどこに相談すればいいですか?

まずは身近な「スクールカウンセラー」を活用し、必要に応じて専門家を探してください。家庭だけで抱え込まず、学校の心理職を頼るのが第一歩です。さらに詳しく探したい場合は、「日本臨床心理士会」の検索サイトや「マイメンタルヘルス」などのサービスを利用することをお勧めします。「国立精神・神経医療研究センター」など公的機関のホームページを訪れ、「正しい情報」にあたることも大切にしてください。

子どものメンタル不調の予防に、大人ができることは?

普段からの「雑談」を通じて、気軽に話せる関係性を築いておくことです。

雑談は万能薬ではありませんが、普段から何気ないコミュニケーションをするという環境を持っておくことが、いざという時に子どもを守るセーフティーネットになります。

特定非営利活動法人メンタルヘルス環境向上プロジェクトとは

特定非営利活動法人メンタルヘルス環境向上プロジェクト(MHEC:メック)は、「メンタルヘルスを特別なものにしない社会」を目指して活動するNPOです。

日本では心の悩みを抱えていても「相談するのは怖い」「迷惑をかけたくない」と感じ、支援につながる前の段階で孤立してしまう人が少なくありません。

私たちはその“相談の手前”にある壁に注目し、誰もが自然に心のケアに触れられる文化を育てることを目指しています。

その中心となる取り組みが、親子で心をひらく体験型メンタルヘルスプログラム「M.O.F.U」です。

アートや音楽、ヒップホップ、マインドフルネスなど多様な表現活動を通じて、子どもも大人も安心して自分の気持ちを表現できる場をつくっています。

現在は 「M.O.F.U 2026 年間ウェルネスサポートプログラム」 の準備を進めており、

その中心となる体験イベントとして 2026年5月31日に「M.O.F.U 2026 ウェルネスイベント」を開催予定です。また、信頼できる心理専門家をご紹介するサービス「マイメンタルヘルス」 などの取り組みも行っています。

専門家だけに任せるのではなく、市民一人ひとりが心の健康について学び支え合える社会を目指し、メンタルヘルス文化の形成に取り組んでいます。

URL:https://www.mentalhealthec.org/

この記事を監修した人

押岡 大覚

臨床心理士・公認心理師・博士(心理学)

九州女子大学 人間科学部 心理・文化学科 教授

児童精神科や小児科,自治体病院内の職員相談室において心理臨床に従事する一方,大学教員として,心理職を目指す学生の教育・訓練にも携わっている。

九州女子大学教員紹介ページ
https://www.kwuc.ac.jp/course/kyoin/detail.php?id=39

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